Appleは10年前の本日、Apple TV HD、Siri Remote、tvOS、そして専用のApp Storeを投入し、同デバイスの抜本的な刷新を図りました。これは、同社のテレビ戦略における大きな転換点となりました。

2015年9月9日にサンフランシスコで開催された「Hey Siri」イベントで発表されたこの新しいApple TVは、当時のティム・クックCEOが「テレビの未来はアプリにある」と宣言した通り、これまでのiTunesや提携コンテンツのストリーミングに主眼を置いていたモデルから、アプリ中心のプラットフォームへと舵を切りました。予約注文は2015年10月26日に開始され、同月30日には顧客の手元に届き始めました。

新Apple TVの核となったのは、iOS 9から派生した専用オペレーティングシステム「tvOS」です。これにより、Appleは初めてサードパーティ開発者向けにプラットフォームを開放し、リビングルーム向けに再設計されたインターフェースとApp Storeを提供しました。開発者はXcode 7と、iPhoneやiPadと同じフレームワークを使用してアプリやゲームを開発できるようになり、既存のiOS開発者が容易に移行できると強調されました。また、iTunes、Netflix、Huluなど複数のプラットフォームを横断してコンテンツを検索できる「ユニバーサル検索」機能も導入されました。

ソフトウェアの刷新と同時に、ハードウェアも大きく進化しました。第4世代Apple TVは、iPhone 6に搭載されていたA8プロセッサを搭載し、32GBまたは64GBのストレージが選択可能でした。HDMI 1.4（1080p対応）、Bluetooth 4.0、802.11ac Wi-Fiをサポートし、先代よりも厚みのある設計は、より高い処理能力とアクティブ冷却を実現しました。

同時に発表された「Siri Remote」は、タッチ・モーション操作に対応し、音声入力用のデュアルマイクを搭載。ガラス製の表面をスワイプすることでナビゲーションやビデオ再生操作が可能でした。内蔵された加速度センサーとジャイロスコープにより、モーションベースのゲームにも対応。Bluetooth経由でApple TVと接続されるため、赤外線のように向きを気にせず操作できる点も特徴でした。

デモンストレーションでは、「新しいコメディを見せて」「彼女は何と言った？」といったSiriによる音声コントロール機能が披露され、複数のサービスから集約された検索結果が表示されました。また、カジュアルゲームプラットフォームとしても位置付けられ、Siri RemoteやiPhoneをコントローラーとして使用するマルチプレイヤーゲームなどが紹介されました。

発売から10年が経過し、Siri、サードパーティアプリ、ゲーミングを軸とするAppleの野心は、期待されたほどには実現しなかったと評価されています。しかし、Apple TV HDとtvOSが確立したプラットフォームの姿と機能は、今日までその基盤を形成し続けています。今年は、より高性能なプロセッサと独自のN1チップを搭載した新型Apple TVが登場するとの噂も浮上しています。