Apple、OpenAIへの人材流出に苦戦か ハードウェア開発本格化で引き抜き加速

Appleが、生成AIのトップ企業であるOpenAIへの人材流出に直面していることが報じられました。OpenAIが初のハードウェア製品開発を本格化させる中、Appleのベテラン技術者を高額な報酬と自由な開発環境を提示して引き抜いていると見られています。

報道によると、OpenAIはディスプレイのないスマートスピーカー型デバイス、スマートグラス、デジタルボイスレコーダー、ウェアラブルピンといったハードウェア製品の開発を進めており、2026年後半から2027年初頭の発売を目指しています。同社は、100万ドル（約1.5億円）を超える株式付与を含む破格の報酬パッケージに加え、少ない官僚主義とより活発な協業体制を約束し、Appleの社員を誘致しているとのことです。

人材流出の規模は拡大しており、昨年AppleからOpenAIに移籍したハードウェア担当者は10人でしたが、今年はすでに20人を超えています。引き抜きの対象は、Appleのユーザーインターフェース、ウェアラブル、カメラ、オーディオ技術などに携わっていた技術者たちです。

具体的には、iPhone 6Sで導入されたSiriの多色波形をデザインしたCyrus Daniel Irani氏（Apple勤務15年）や、Apple Watchのハードウェア部門で上級幹部を務めたErik de Jong氏などがOpenAIに移籍しています。

興味深いことに、Apple社員の中にはOpenAIに自ら連絡を取り、協業の機会を模索する動きも見られます。特に、元Appleのデザイン責任者であるジョニー・アイブ氏や、元Appleのハードウェア担当幹部タン・タン氏といった人物と、「より大胆な製品」を共同で開発することへの期待が高まっているようです。

Appleの社員からは、携わる製品が「漸進的な変化」にとどまっていることや、社内の官僚主義、過去1年間の株価の伸び悩みに対する不満の声も聞かれます。

こうした状況に対し、Appleは才能ある人材のOpenAIへの流出に警戒感を強めていると伝えられています。先月には、中国で予定されていた米中製造・サプライチェーンチーム向けのオフサイト会議を急遽中止しました。これは、さらなる人材流出を防ぐため、多数の幹部や技術者が長期間クパチーノを離れることを懸念したためとされています。

また、OpenAIは、iPhoneやAirPodsの組立を担う中国企業Luxshareと、少なくとも1つのデバイスの組立契約を結んだ模様です。さらに、AirPods、HomePods、Apple Watchの部品を供給するGoertekに対しても、スピーカーなどの部品供給を打診していると報じられており、Apple製品の主要サプライヤーを起用することで、ハードウェア開発を加速させる狙いがあると考えられます。