iPad Pro、誕生10周年：モバイルデバイスの概念を変えた進化の軌跡
AppleのiPad Proが今年、誕生10周年を迎えました。かつて「大きな画面のiPhone」と見なされがちだったiPadが、仕事やクリエイティブな作業に活用できる「コンピューター」としての地位を確立するまで、iPad Proはその歴史を牽引してきました。
2015年に登場した初代iPad Proは、12.9インチという当時のiOSデバイスとしては圧倒的な大画面を搭載。さらに、同年にリリースされたiOS 9のマルチタスク機能（Slide Over、Split View）により、複数のアプリを同時に利用する道を開きました。
この初代モデルとともに導入されたのが、Smart KeyboardとApple Pencilです。Smart Keyboardは、iPadにキーボードを装着し、ラップトップのような使い方をAppleが公式に推奨する姿勢を示しました。そしてApple Pencilは、低遅延で高精度な入力体験を提供し、長年iPadで創作活動をしてきたアーティストたちに待望のツールをもたらしました。これは、iPadが単なるコンテンツ消費デバイスから、プロフェッショナルな創作活動を支える強力なツールへと変貌を遂げた瞬間でもありました。
この10年間で、iPad Proとそのアクセサリーは目覚ましい進化を遂げてきました。Magic Keyboardの登場でマウス/トラックパッドのサポートが実現し、Apple Pencilも磁気充電や精度向上を果たしています。iPad Pro本体も、Appleシリコン（Mシリーズチップ）の搭載により、MacBook Airと肩を並べるほどの処理性能を獲得。2024年モデルで導入されたタンデムOLEDディスプレイは、歴代のApple製品の中で最高の表示品質を誇ります。
製品ラインナップにおけるiPad Proの位置づけも変化しました。登場時は799ドルからだった初代モデルに対し、現在の最上位モデルは1299ドルからと、より高価格帯へと移行し、最先端技術を凝縮した真のプロフェッショナル向けデバイスとなりました。一方で、かつてiPad Proが担っていた多くの機能はiPad Airにも搭載され、例えばiPad Airの大型モデルは初代iPad Proと同じ799ドルから提供されており、より幅広いユーザーにその恩恵が行き渡るようになりました。
iPad Proが今後どのような進化を遂げるかは未知数ですが、この10年でiPadの可能性に対する認識を根本から変え、モバイルデバイスのあり方そのものに大きな影響を与えたことは間違いありません。最新のiPadOS 26によるマルチタスク機能の強化も相まって、今日のiPad Proは、まさに初代モデルが目指した「未来のコンピューティング」を着実に実現していると言えるでしょう。
