Apple、大規模な幹部刷新へ クックCEO後継はジョン・ターナス氏が最有力か

Appleが、過去10年以上で最も重要なリーダーシップ移行期に突入していることが明らかになりました。複数の上級幹部が退任準備を進め、ティム・クックCEOが次世代リーダーの育成に着手していると、ブルームバーグのマーク・ガーマン記者が報じています。

ガーマン記者の「パワーオン」ニュースレターによると、クックCEOの後継者候補と目されてきたジェフ・ウィリアムズ最高執行責任者（COO）が年内に退任する予定です。彼の退任は、2019年のチーフデザインオフィサーであるジョニー・アイブ氏と小売部門責任者アンジェラ・アーレンツ氏の退任以来、初めての主要幹部の交代となります。これは、長年要職を務めてきた幹部を含む、より広範な刷新の始まりとみられています。

旧マーケティング責任者のフィル・シラー氏はApp Storeと製品発表イベントの監督を続け、昨年退任した旧最高財務責任者（CFO）のルカ・マエストリ氏も不動産と情報システムの監督権限を保持しています。しかし、ガーマン記者は「安定の時代は永遠には続かない」とし、他にも複数の幹部が引退や役割変更を検討していると指摘しています。

特に注目されるのが、人工知能（AI）部門の動向です。機械学習・AI戦略担当上級副社長のジョン・ジャナンドレア氏の立場は、Siriの再開発の遅れやAI戦略に関する社内対立を受け、長年不透明とされてきました。最近では、マイク・ロックウェル氏（元Vision Pro担当）がSiriの改善を任されるなど、ジャナンドレア氏の一部の責任は再配分されています。AppleはAIリーダーシップを強化するため、Meta Platformsの幹部を含む外部候補者も検討していると報じられています。

ハードウェア部門でも転換期を迎える可能性があります。カスタムAシリーズおよびMシリーズチップの開発を牽引してきたハードウェア技術担当上級副社長のジョニー・スルージ氏も自身の将来を検討中と伝えられています。後任候補としては、モデム・無線チームを率いるゾンジアン・チェン氏や、プロセッサ設計を監督するスリ・サンタナム氏の名前が挙がっています。

また、環境・政策・社会貢献担当副社長のリサ・ジャクソン氏も引退を検討しているとされています。

来月65歳になるティム・クックCEOは、依然としてAppleのリーダーシップ議論の中心にいます。ウィリアムズ氏の退任により、明確なナンバー2が不在となる状況です。ガーマン記者は、クックCEOが将来的にジェフ・ベゾス氏やビル・ゲイツ氏のように会長職に移行する可能性も示唆しています。

クックCEOの後継者として社内で最も有力視されているのが、ジョン・ターナス氏（ハードウェアエンジニアリング担当上級副社長）です。ガーマン記者は、ターナス氏が社内での露出を増やし、製品戦略の形成において重要な役割を担っていることから、「最も有力な後継者」と見ています。2001年にAppleに入社し、2021年に上級副社長となったターナス氏は、近年iPhone、iPad、Macのデザインとエンジニアリングを監督してきました。

Appleの広報チームもすでにターナス氏にスポットを当て始めており、段階的な権力移行の準備を示唆しているとガーマン記者は指摘しています。先月のiPhone Air発表ではターナス氏が前面に立ち、最近ではAppleのマーケティング活動やインタビューで頻繁に登場しています。

現在50歳のターナス氏は、クック氏が2011年にCEOに就任した時と同じ年齢であり、「長期的な後継者の型に合致する」とガーマン記者は述べています。Appleの役員会は、人工知能、複合現実（MR）、ホームオートメーションといった分野でのイノベーションを再活性化するため、次のリーダーとして技術者を好む可能性が高いとみられています。関係者の間では、「ターナス氏がいずれCEOになることに疑問はほとんどない」との見方が広がっています。