iPhoneのiOS、旧バージョンに戻したい？その厳しい現実とは

Appleは毎年恒例のiOSアップデートを通じて、iPhoneに新機能やデザイン変更、そして何よりも重要なセキュリティ強化をもたらします。多くのユーザーが最新バージョンへ移行する一方で、特定の理由から旧バージョンのiOSに戻したいと考えるユーザーも少なくありません。しかし、そのダウングレードは、果たして可能なのでしょうか？

 # 厳しい時間制限とAppleの「署名」

結論から言うと、iOSのダウングレードは可能ですが、非常に厳しい条件と時間制限があります。Appleはセキュリティ上の理由から、新しいiOSバージョンがリリースされてからわずか数日、長くても数週間で旧バージョンの「署名（サイニング）」を停止します。この署名がなければ、そのバージョンのiOSをiPhoneにインストールすることはできません。一度署名が停止されてしまうと、公式な方法でのダウングレードは不可能となります。

 # ダウングレードの手順（署名期間内の場合）

もし運良く署名期間内に間に合えば、以下の手順でダウングレードが可能です。ただし、このプロセスはiPhoneを完全に初期化する（データがすべて消去される）必要がある点に注意が必要です。

1.

 IPSWファイルのダウンロード

: Macで「IPSW.me」などのサイトにアクセスし、目的のiOSバージョンに適合するIPSWファイルをダウンロードします。
2.

 「探す」機能をオフに

: iPhoneの「設定」からApple IDをタップし、「探す」→「iPhoneを探す」をオフにします。
3.

 iPhoneの接続と復元

: iPhoneをMacに接続し、Finderを開きます。Option/Altキーを押しながら「iPhoneを復元」を選択し、ダウンロードしたIPSWファイルを指定します。
4.

 初期設定

: 古いiOSがインストールされた後、デバイスを新規として設定し直します。アップデート後に作成されたバックアップから復元すると、新しいiOSが再インストールされてしまうため、注意が必要です。

 # ベータ版からのダウングレード

iOSのベータ版を使用している場合、正式版の同じバージョンに移行するだけであれば、設定でベータアップデートをオフにするだけで比較的簡単です。しかし、旧バージョンの公式iOSに戻す場合は、同様にデバイスの初期化が必要となります。

 # なぜAppleはダウングレードを制限するのか

Appleが旧バージョンへのダウングレードを厳しく制限する背景には、明確なセキュリティ上の理由があります。同社のクレイグ・フェデリギ上級副社長も2016年に、各iOSアップデートはiPhoneのセキュリティを向上させており、旧バージョンに戻すことはハッカーによる攻撃リスクを高めると述べています。古いソフトウェアには既知の脆弱性が存在する可能性があり、Appleはユーザーの安全を最優先しています。

 # 最終手段：古いiPhoneの購入

どうしても特定の旧iOSバージョンが必要な場合、例えば古いアプリがそのバージョンでしか動作しないといった状況では、最終手段として、そのバージョンが動作する古いiPhoneを中古市場で購入するという選択肢も考えられます。

Appleが最新のソフトウェア利用を推奨するのは、新機能やデザインだけでなく、最新のセキュリティ対策が施され、最も安全な状態が保たれるためです。ダウングレードは可能ではあるものの、データ損失のリスクや時間的な制約、そしてセキュリティ上の懸念を伴うため、慎重な判断が求められます。