Apple、価格戦略を転換か：低価格帯市場から撤退の懸念浮上

長らく高品質・高価格路線で知られてきたApple製品ですが、近年その価格戦略に大きな変化が見られます。かつては妥協のない製品開発を反映した価格設定で、Mac miniやiPhone SEシリーズといった比較的手頃な選択肢も提供されていました。しかし現在は、利益を最優先する姿勢が強まり、低価格帯のユーザー層を事実上切り捨てる動きが加速しているとの指摘が出ています。

同社の戦略は、上位モデルへの買い替えを促すため、エントリーモデルの性能を意図的に抑えたり、ストレージの選択肢を制限したりする方向へシフト。各種アダプター（ドングル）も新たな収益源となるなど、一部ユーザーからは強引なビジネスモデルへの不満の声も上がり始めています。この戦略はAppleを史上初の時価総額3兆ドル企業へと押し上げましたが、同時に低価格帯の製品が市場から姿を消しつつあります。

直近の事例としては、iPhone SE第3世代に代わる最も安価なスマートフォンとして登場したiPhone 16eが、旧モデルの429ドルから599ドルへと大幅に値上げされました。これにより、Appleのスマートフォンラインナップから500ドル以下の製品が事実上消滅し、低予算の消費者は選択肢を失いつつあります。

さらに、今後発表される新製品についても価格上昇の懸念が浮上しています。秋に開催されるイベントで発表されると見られるiPhone 17 Proは、前モデルより200ドル高くなる可能性が報じられ、機能面でProモデルに劣るiPhone 17 Airでさえ、1,099ドルからとなる予測も出ています。これには部品コストの上昇や関税、複雑なデザインによる製造コスト増などの要因も考えられますが、Appleが幅広い層に技術を提供することへの意欲を失いつつあるのではないかとの懸念が広がっています。

現在、Apple製品の中で唯一の低価格帯の希望と目されるのはApple Watch SEです。間もなく登場すると見られる第3世代モデルに期待が集まる一方で、大型化された画面や新デザイン、高性能プロセッサーの搭載といった噂があり、iPhone 16eの例と同様に価格が上昇する可能性も指摘されています。

かつてスティーブ・ジョブズは「世界を変えたいか？」と問いかけ、多くの才能を引き寄せました。しかし、製品が一部の富裕層にしか手の届かないものとなれば、その技術で世界を変えるというAppleのビジョンは達成が困難になるでしょう。

今秋のイベントでは、iPhone 17シリーズや新たなApple Watch、AirPods Pro 3などが発表されると見られており、ハイエンドモデルに注目が集まります。Appleがその企業理念と価格戦略のバランスをどう保っていくのか、今後の動向が注視されます。