生成AIが現代の変革的テクノロジーとして注目を集める中、ウェブブラウジングのあり方も大きく変わりつつあります。ChatGPTのようなツールが文章作成や画像生成、問題解決支援などでAIの力を示す一方で、今、このAIがウェブの閲覧方法そのものに新たな潮流を生み出しています。

OperaやPerplexityといった企業が開発を進める「エージェンティックブラウザ」は、AIを基盤とした次世代のウェブツールです。これらのブラウザは、ウェブページの内容をリアルタイムで理解し、AIを使ってページと対話し、ユーザーに代わって複雑なワークフローを実行する能力を持ちます。ユーザーが自ら情報を探し回る手間を省き、AIが全てを制御することで、他のタスクに集中できるという画期的な体験を約束しています。

長年Safariを愛用してきた筆者は、AppleがAI機能の提供に苦戦する中、エージェンティックブラウザが真のゲームチェンジャーとなり得るのか、そしてSafariからの乗り換えを促すほどの魅力があるのかを検証するため、二つのブラウザのテストに挑みました。今回試したのは、現在限定ベータ版として提供されている「Opera Neon」と「Perplexity Comet」です。

 次世代ブラウザの体験：Opera NeonとPerplexity Comet

両ブラウザは通常のインターフェースに加え、ChatGPTのようなAIアシスタント機能が統合されており、直接質問を投げかけることができます。従来の検索エンジンではなく、独自のAIチャットボットが質問に回答するため、ウェブサイトを巡る手間が省けます。検索だけでなく、フォーム入力、旅行予約、ウェブアプリ作成など、AIエンジンとの対話を中心にブラウザが構築されているのが特徴です。

筆者が「最新のiPhone 17の噂」を尋ねたところ、Opera Neonはスペックのテキストを生成。Perplexity CometはAIによる要約に加え、関連するウェブ記事へのリンクも提供しました。さらに、航空券の予約といった複雑なタスクも試しました。筆者が指定した区間の9月の最安航空券をリクエストすると、両ブラウザは航空会社のウェブサイトを開き、最安運賃を選択。Opera Neonはそのまま決済に進んだ一方、Perplexity Cometは追加の指示を必要としました。Opera Neonはウェブページやミニウェブアプリの生成も可能です。筆者がiPhone 17の噂されている全モデルを比較するページ作成を依頼したところ、5分足らずで生成しました。

これらのAIブラウザから最良の結果を得るには、指示を非常に具体的にすることが重要だと筆者は語ります。例えば、「サンパウロのホテルを9月17日から18日まで、ジャルジン地区周辺で良いホテルを予約してほしい」と具体的に指示したところ、AIエージェントは直接決済ページまで導きました。

最も複雑なタスクでは、AIブラウザは完了までに数分を要し、手動で検索する方が速い場合もありました。しかし、AIの真価は、ユーザーが他の作業をしている間に、コンピューターが面倒な仕事を代行してくれる点にあります。これは、私たちの生活におけるAIの有用性を示す最高の事例の一つと言えるでしょう。

 AppleのAI戦略と未来の展望

OperaやPerplexityに比べ、AppleはエージェンティックAI体験において明らかに後れを取っています。macOS 26やiOS 26で導入される「Apple Intelligence」は、メールの書き換えや通知の要約など、個人的なコンテキストに焦点を当てており、プライバシーとオンデバイス処理を重視した第一歩としては印象的です。しかし、Perplexity CometやOpera Neonのようなエージェンティック機能はSafariにはまだ統合されておらず、ウェブの利用方法そのものを変革しようとするものではありません。

筆者は現状、従来のウェブ利用に慣れていますが、AIアシスタントが面倒な作業を代行してくれる魅力は否定できず、Appleにも同様の取り組みを期待しています。実際、AppleはCometブラウザの開発元であるPerplexityの買収を内部で協議していると報じられており、評価額140億ドルとされるこの買収が実現すれば、AI競争、特にウェブ検索とエージェンティックブラウジングの分野でAppleの遅れを挽回する助けとなる可能性があります。Googleとの数十億ドル規模の検索契約が独占禁止法により脅かされている現状も、Appleが独自のAI駆動型ブラウザと検索エンジンに投資する強力な動機となるでしょう。

Opera NeonやPerplexity Cometのようなエージェンティックブラウザは、まだ完璧ではなく、時に処理が遅いものの、ウェブブラウジングの未来の一端を示しています。筆者はまだSafariを手放す準備ができていませんが、AIアシスタントに面倒な作業を任せることの魅力は理解できます。テクノロジーが進化し、高速化すれば、特にAppleが追いつく努力をしなければ、一部のタスクではSafariに取って代わる可能性も見ています。

Appleが自社で開発するか、Perplexityのような企業を買収するかにかかわらず、私たちが知るウェブは大きな変革期を迎えています。そして今回、AIは単にブラウザを強化するだけでなく、ブラウザそのものになろうとしているのです。