iOS 26で導入される新デザイン「Liquid Glass」は、その美しい見た目が評価される一方で、Appleの伝統的なデザイン哲学からの逸脱とユーザーエクスペリエンスの低下を懸念する声が上がっています。

特に議論の的となっているのが、設定アプリなどで見られる「トグルスイッチ」の動作です。Liquid Glassによって透明で光を屈折させるようなアニメーションが加えられたこのスイッチは、スライド操作では魅力的に映るものの、単にタップする際には過度に拡大し、跳ねるように見える挙動がユーザーの注意を散漫にさせると指摘されています。その目的が機能のオン/オフという「手段」であるにもかかわらず、スイッチ自体が注目を集めてしまうのです。

これは、スティーブ・ジョブズが掲げた「デザインはそれがどう機能するか」というAppleの根幹をなす思想に反すると筆者は主張します。Appleのデザインはこれまで、余計な要素や注意をそらすものを排除し、製品の本質を際立たせることを目指してきました。しかしLiquid Glassのトグルは、その哲学を明らかに侵害しているように見えます。

WWDCでのLiquid Glassの発表時、Appleのデザイン担当者は「喜びと楽しさ」を強調しましたが、実際の使用における具体的な改善点にはほとんど触れられませんでした。きらめくような視覚効果やアニメーションは、本来ユーザーが集中すべき「コンテンツ」から注意を逸らし、デザイン自体が自己主張していると分析されています。

この問題は、Appleがインターフェースデザインにおいて「ユーザーの生活を豊かにする」ことよりも「目を引く」ことを優先する傾向にあるのではないか、という深い懸念を抱かせています。かつてジョブズやジョニー・アイブが「見た目だけのデザインは本質を見失っている」と警鐘を鳴らしたように、美しいだけでは優れたデザインとは言えません。

Liquid Glassは複数年かけて開発されるプロジェクトであり、ベータ版の更新でもすでに変更が加えられていることから、今後の調整で改善される余地は十分にあります。Appleが、ユーザーエクスペリエンスを損なうことなく、Liquid Glassの持つ視覚的な魅力を最大限に引き出す解決策を見つけることが、今後のiOSデザインの行方を左右するでしょう。