NetflixからApple TV+へ乗り換え？ユーザー体験重視でサービスを選ぶ時代

世界中で3億人を超える有料会員を抱え、オンデマンドTVストリーミングの「標準」と認識されてきたNetflix。しかし近年、度重なる値上げやユーザー体験を損なう変更が導入され、不満を募らせるユーザーが増えています。

一方で、約4500万人の利用者と限定的なコンテンツライブラリを持つApple TV+は、その堅実なサービス提供で注目を集めています。長年両プラットフォームを利用してきた筆者も、ついにNetflixを解約し、Apple TV+に乗り換える決断をしました。その理由を見ていきましょう。

—

 # 1. アカウント共有は家族に優しく

かつてNetflixは「パスワードの共有は愛」とツイートし、アカウント共有を奨励していました。同時視聴数の制限はあったものの、異なる世帯での共有も許容されていました。しかし、最近になってNetflixは方針を転換。追加料金を支払うか、別のアカウントに登録しなければ、別居家族との共有ができないようになりました。

対照的にApple TV+は、Appleのファミリー共有機能を利用します。パスワードを共有する必要はなく、一人の加入者がいれば、最大6人の「家族」が各自のAppleアカウントでサービスを利用可能。全員が同時にストリーミングを楽しめ、個別の視聴履歴やマイリストも保持されます。これは、ユーザーのプライバシーと利便性を尊重した、より寛容なアプローチと言えるでしょう。

 # 2. 国際旅行中の安定性

海外旅行中、Netflixではライセンスの問題で視聴可能なコンテンツが国によって変化し、時には見ている最中の作品が見られなくなることがあります。さらに、一部のユーザーからは、海外で全くサービスが利用できなくなるという報告もあり、その不安定さが指摘されています。

しかしApple TV+の場合、国境を越えてもコンテンツカタログは一貫しています。VPNサービスを使う必要もなく、例えば米国のAppleアカウントを持っていれば、サービスが提供されていないトルコに滞在中でも、米国のTV+ライブラリにアクセスできます。

 # 3. 量より質、オリジナルの魅力

Netflixは常に大量の新作を提供していますが、その多くは見ごたえのないものだという声も少なくありません。興味のある作品を探すのに長時間かかり、結局見るのを諦めてしまうといった経験は一般的です。また、ライセンス契約による期間限定作品も多く、短期間で急いで視聴するよう促されるプレッシャーも存在します。

一方、Apple TV+はオリジナルの自社制作作品に重点を置いています。サービス開始当初は作品数が限定的でしたが、着実に増加し、今では幅広いジャンルの映画やシリーズを揃えています。Appleの高い基準により、量は少なくてもコンテンツの質は総じて優れており、週に1話ずつ配信されるスタイルは、忙しいユーザーでも無理なく視聴できる利点があります。

 # 4. 無料体験と価格の優位性

Netflixは現在、無料トライアルを提供していません。広告なしの最安プランは月額18ドルですが、画質は1080pに制限され、Dolby Atmosにも非対応です。4K画質と没入型オーディオを楽しむには、月額25ドルの上位プランへのアップグレードが必要です。

これに対しApple TV+は、新規ユーザー向けに7日間の無料トライアルを提供。さらに、対象のApple製品を最近購入した場合は、3ヶ月間の無料期間が付与されます。無料期間終了後の料金は月額12.99ドル、または年間99ドルで、ファミリー共有、広告なし、最高画質、空間オーディオ対応といった充実した内容です。また、Apple OneやApple Musicの学生プラン加入者は無料でTV+を利用できるという特典もあります。

 # 5. Appleエコシステムとの深い連携

Apple TVアプリは、TV+だけでなくParamount+やStarzといったサードパーティのストリーミングサービスも統合し、視聴者がユニバーサルキューを通じてお気に入りの番組すべてにアクセスできる便利な機能を提供しています。しかし、NetflixはAppleとの対立が原因で、この機能へのサポートを拒否しており、ユーザー体験を犠自にしている状況です。

また、Apple TV+には、画面上の俳優情報を表示したり、サウンドトラックをApple Musicライブラリに追加したりできる「InSight」機能が搭載されています。これはiPhoneのApple TVリモートとシームレスに連携し、iPadやMacなど他のAppleデバイスでも利用可能です。

—

 # 長期的な視点で勝つのは？

NetflixがApple TV+を圧倒する加入者数を誇る一方で、Appleは「長期戦」を見据えているようです。ユーザーを敵視するような手法に頼るのではなく、質の高いシリーズや映画でライブラリを着実に拡張し、オーガニックな成長を重視しています。

筆者は、もし両社が現在の方向性を維持するならば、今後10年間のうちにApple TV+がNetflixを超える可能性も十分にあると見ています。