Apple TV+で2022年に始まったメジャーリーグ中継「Friday Night Baseball」が、導入からわずか3年で終了する可能性が浮上しています。先週、Yahoo Sportsが、Appleと「Friday Night Baseball」の契約が「不透明な状況」にあると報じ、NBC/Peacockが引き継ぐ可能性があると伝えました。

Appleは2022年にMLBと推定6億ドルの契約を結び、スポーツ中継に初参入。翌2023年にはメジャーリーグサッカー（MLS）と10年間で25億ドルの大型契約を結び、全試合を独占配信するなど、NetflixやAmazon Prime Videoなどに対抗する主要サービスプロバイダーとしての地位確立を目指していました。

しかし、「Friday Night Baseball」は高い放送品質を誇る一方で、ランダムな試合編成や頻繁に入れ替わる解説陣に対し、毎週のようにSNSで不満が噴出。Apple TV+の加入者増加にも大きな効果が見られなかったと指摘されています。
MLBとの7年契約を早期に打ち切る背景にAppleとMLBのどちらが動いているかは不明ですが、いずれも驚くことではないと見られています。

また、MLSとの巨額契約の先行きにも疑問符がつけられています。MLSコミッショナーはAppleを「素晴らしいテクノロジーパートナー」と評価しつつも、1試合あたりのユニーク視聴者数が約12万人に留まる視聴者数データや、試合へのアクセス確保の課題を挙げています。
2025年シーズンに向けては、XfinityやDirecTVでの提供、毎週日曜日の無料試合など、MLS Season Passへのアクセスを容易にする努力がされていますが、最近の調査では有料加入者の72%が年間99ドル（加入者は79ドル）の料金を「高すぎる」と感じていることが明らかになりました。

年間1,000試合以上を99ドルで視聴できるのは必ずしも割高ではないものの、ストリーミングサービスでのスポーツ視聴がファンにとってより複雑で費用がかかるという根本的な課題を浮き彫りにしています。複数のサービスを契約する必要性や、テレビ放送のように瞬時にチャンネルを切り替えられない操作性の不便さも、視聴体験を損ねる要因とされています。

Appleは過去にもNFLやFIFA、F1といった主要スポーツの放映権獲得を目指しながら実現しなかったケースが複数あり、スポーツ分野でのコミットメントには波がありました。
仮に「Friday Night Baseball」や「MLS Season Pass」が終了すれば、Appleがスポーツ配信事業から手を引く可能性を示唆していると見られます。

ストリーミングによるスポーツ配信は今後も拡大していくと予測されていますが、Peacock、Prime Video、Netflixといった他社がコンテンツ獲得に動く中、ファンは今後、見たい試合をすべて視聴することが困難になり、費用も高騰するという課題に直面するとの見方が広がっています。こうした状況でAppleがスポーツ配信から撤退する選択は、ユーザー体験の複雑さを考慮すれば、賢明な判断となるかもしれません。