英国、AppleへのiCloudデータアクセス要求を撤回へ 米情報機関トップ発表

英国政府が、AppleユーザーのiCloudに保存された暗号化データへのアクセスを求める要求を取り下げることで合意した。米国の情報機関トップがX（旧Twitter）で明らかにしたもので、米政府の強い圧力が背景にあると見られている。

米国の情報機関トップであるタルシ・ギャバード氏は、英国がAppleに対し、米国民の保護された暗号化データへのアクセスを可能にする「バックドア」の提供を強制する計画を撤回したと発表した。同氏は、この要求が「市民的自由を侵害するものだった」と指摘。バイデン大統領や副大統領らと共に数ヶ月にわたり英国と緊密に連携してきた結果だと強調した。

しかし、Financial Timesなどの報道によると、英国は要請の撤回には合意したものの、まだ正式な取り消しには至っておらず、Apple側も両政府から公式な通知を受け取っていない状況だ。

この問題は、英国が「捜査権限法（IPA）」に基づき、世界中のiCloudにアップロードされた暗号化ユーザーデータへの秘密アクセスを要求したことに端を発する。Appleはこれに対し、セキュリティ基準を妥協するのではなく、英国での「高度なデータ保護機能」の提供を停止する方針を示し、さらにFaceTimeやiMessageといった主要機能の英国からの撤退も辞さない構えを見せていた。

英国政府はテロ対策や児童性的虐待の捜査を目的としていたが、この要求は、英国外のユーザーデータにその国の政府の許可なくアクセスを求めるものであり、企業が政府からの要求の存在を公表することを禁じるIPAの規定と合わせて、国際的な論争を巻き起こしていた。英国政府はこのケースの詳細を非公開にしようとしたが、Appleが法的異議申し立てを行ったことで、一部情報が公開された経緯がある。