ブルームバーグのマーク・ガーマン記者は、アップルがAIとロボット技術の分野で抜本的な計画を進めており、これが同社の「好転」につながる可能性を報じました。これまでAI分野での進捗が遅れ、ファンを失望させてきたアップルにとって、今回の発表は巻き返しの大きな期待を抱かせます。

しかし、アップルカーやVision Pro、折りたたみiPhoneなど、過去にも「数年後」に登場すると噂されながら実現しなかったり、期待を下回ったりした製品は少なくありません。今回のAI関連製品やサービスが、競合に遅れを取っている現状を打開し、期待通りに提供され、その性能でユーザーを驚かせることが求められています。

 LLMベースの次世代Siri「Linwood」

ガーマン記者のレポートによると、アップルの今後のプロジェクトの基盤となるのが、大規模言語モデル（LLM）を基盤とした全く新しいSiriです。コードネーム「Linwood」と呼ばれるこの次世代Siriは、ChatGPTなどでおなじみの生成AIと同様に、ユーザーの個人コンテキストを理解し、画面上の情報に基づいてアプリ内でアクションを実行できるようになるといいます。

当初iOS 18でのデビューが予定されていましたが、LLMモデルへの完全な移行を目指すため、約1年の延期となりました。アップルが開発したLLMに加え、アンソロピックのClaudeなど外部のモデルも並行してテストされており、最終的な採用モデルは未定です。また、iPhoneやiPadでのSiriの新しいビジュアルデザインも準備されています。

 AI搭載ロボットへの進出

Siriの刷新はソフトウェアに留まらず、アップルはAIを搭載した物理製品の開発にも注力しています。最も注目されるのが、可動式のアームにiPadのようなスクリーンを搭載した卓上ロボットです。このロボットは、単なるデバイスではなく「部屋の中の人物」のように振る舞い、会話に参加したり、役立つ情報を提供したりすることが目指されています。「Bubbles」というプロジェクトにより、視覚的な表現とパーソナリティが付与される予定です。FaceTime通話機能も優先されており、iPhoneをジョイスティックとして画面を操作できるようになります。現在のところ、2027年の発売が予想されていますが、計画は流動的です。

このほかにも、車輪付きロボットや、製造現場や店舗のバックヤードで使える大型メカニカルアームを備えたロボットなど、初期開発段階の複数のロボットが存在すると報じられています。

 スマートホームOS「Charismatic」と新ディスプレイ

卓上ロボットに加え、アップルは新しいスマートホーム用OS「Charismatic」を搭載した単体スマートホームディスプレイも開発しています。このディスプレイは、卓上ロボットからアームを取り除いたようなよりシンプルな形状で、早ければ来年にも発売される可能性があります。スマートホームの制御、音楽再生、メモ、ウェブブラウジング、FaceTime通話に対応し、時計表示やウィジェットが中心のインターフェースとなる見込みです。顔認識機能により、ユーザーに合わせたレイアウトや情報を表示できるよう設計されています。

また、AI搭載カメラ「J450」もスマートホーム製品のラインアップに加わる予定です。顔認識と赤外線センサーで部屋にいる人物を特定し、ホームセキュリティだけでなく、部屋に人がいない場合に照明を消したり、特定の人物が部屋に入った際に好みの音楽を再生したりといったホームオートメーションにも活用されます。これはRingやNestといった競合に対抗するスマートホーム製品群の第一弾とされており、顔認識でドアロックを解除するスマートドアベルもテスト中とのことです。

 今後の展望と課題

アップルはAI分野で遅れを取り戻すべく、パーソナリティを持ったAIとスマートホーム製品への統合という新たな領域に踏み出しています。しかし、その計画がどこまで実現するかは依然として不透明です。過去に開発中止となったアップルカーや、高価ながら一部のユーザーに限られたVision Proの例もあるように、アップルの壮大な計画が常に期待通りの形で市場に届けられるわけではありません。今回のAIとロボットの取り組みが、真に革新的な製品として結実するのか、今後の動向が注目されます。