Apple、AI人材の大量流出に直面か – ファウンデーションモデル責任者もMetaへ

Appleが今年1月以降、人工知能（AI）部門から主要な人材を相次いで競合他社に奪われていることが報じられ、シリコンバレーの熾烈なAI人材獲得競争において、主要な被害者の一つとなっていることがフィナンシャル・タイムズ紙の報道で明らかになりました。

過去7ヶ月間で、AppleのAIチームからは約10人以上のスタッフが流出し、Meta、OpenAI、xAI、Cohereといったライバル企業へと移籍しています。特に注目されるのは、ファウンデーションモデルチームを率いていたルオミン・パン氏のMetaへの移籍です。同氏はマーク・ザッカーバーグCEO直々の誘いを受け、2億ドル（約310億円）もの報酬パッケージで引き抜かれたと報じられています。

これまでにAppleのAIチームを離れた主要メンバーには、以下のような名前が挙げられます。

* Brandon McKinzie（OpenAIへ）
* Dian Ang Yap（OpenAIへ）
* Liutong Zhou（Cohereへ）
* Ruoming Pang（Metaへ）
* Mark Lee（Metaへ）
* Tom Gunter（Metaへ）
* Bowen Zhang（Metaへ）
* Shuang Ma（Metaへ）
* Floris Weers（スタートアップへ）

流出したメンバーの多くは、Appleが昨年発表したAIモデルに関する研究論文にも貢献していました。中核的なファウンデーションモデルチームはわずか50～60人規模とされるため、個々の人材流出は同社にとって甚大な痛手となっています。

業界のリクルーターらは、この人材流出をAppleのAIの未来に対する「信頼の危機」と見ています。人材紹介会社Razorooのアーロン・サインズ氏は、企業がエリートAI人材を知的財産や事業部門全体と同等の「戦略的資産」と見なしていると指摘。「真にファウンデーションモデルの経験を持ち、その開発と展開に必要なスキルを持つ人材は、世界にわずか1000人から2000人程度しかいない」と述べています。

この人材流出は、AppleがSiriに大規模言語モデル（LLM）を統合する試みに苦戦している時期と重なります。昨年WWDCで発表されたチャットボットのようなバーチャルアシスタント機能は、いまだ提供されていません。

Appleは報じられるところによると、チューリッヒにAIオフィスを設立し、Siriのまったく新しいソフトウェアアーキテクチャ「モノリシックモデル」を開発しているとされています。これは全体がLLMエンジンに基づいて構築され、長年の機能追加で断片化してしまったSiriの既存の「ハイブリッド」システムを置き換えることを目的としています。この新アーキテクチャは、Siriをより自然な会話ができ、情報理解と合成能力を大幅に向上させることを目指しています。

先日行われたAppleの決算説明会で、ティム・クックCEOはApple Intelligenceを搭載した、よりパーソナライズされたSiriについて「順調に進捗している」と述べ、来年提供されることを改めて強調しました。新しい機能には、ユーザーの個人的なコンテキスト理解の向上、画面上の状況認識、アプリごとの詳細な制御などが含まれる予定です。