Appleは本日、米司法省が提起した反トラスト法訴訟に対し、反論書を提出しました。同社は、司法省の訴訟が技術設計に「危険な前例」を設定し、iPhoneを他社製品と差別化する核となる原則を脅かすものだと強く主張しています。

米司法省は今年3月、Appleがスマートフォン市場で違法な独占状態にあるとして提訴しました。その根拠として、Appleの決定が競争を阻害し、消費者をiPhoneエコシステムに囲い込んだとする5つの事例を挙げました。具体的には、多機能な「スーパーアプリ」やクラウドストリーミングゲームのブロック、Android版iMessageの欠如とメッセージの互換性問題、サードパーティ製スマートウォッチの機能制限、そしてNFCチップへの銀行アプリなどのアクセス拒否などが指摘されていました。

しかしAppleは、司法省の主張の多くはすでに弱体化しているか、関連性が薄れていると反論しています。例えば、iOS 17.4でクラウドストリーミングアプリやミニゲームを提供するアプリの制限を撤廃し、「スーパーアプリ」は以前からサポートしていると説明。また、司法省の提訴後にはRCSメッセージング標準に対応し、Androidデバイスとのメッセージング互換性を向上させました。さらに、iOS 18.1ではNFCチップへのサードパーティ製支払いアプリからのアクセスも開放しています。

Appleは、司法省が市場シェアの算出に売上高を指標としている点や、「高性能スマートフォン」という未承認のカテゴリーを導入している点を不合理だと批判。提訴に至った苦情は、iPhone顧客からではなく、Appleの競合である一部の開発者からのものであると指摘しました。同社は、司法省の要求に応じれば、消費者のiPhone体験が低下し、セキュリティやプライバシー、操作性が損なわれる恐れがあると主張しています。本件は、少数の大企業がAppleの技術とイノベーションにただ乗りしようとしているものだ、と強調しました。

訴訟は今後、証拠開示段階（ディスカバリー）に入り、Appleは司法省の主張が不正確であることを立証する構えです。その後、略式判決、さらに裁判、控訴と進む可能性があり、全プロセスは数年に及ぶ見通しです。App Storeのエコシステムは急速に変化しており、今後の規則変更が司法省の主張をさらに無効化する可能性も指摘されています。