ワイヤレス充電の進化：Qi、MagSafe、そして新世代のQi2・Qi 2.2が登場

モバイルデバイスの充電において、ケーブル不要なワイヤレス充電は利便性の高い選択肢として広く普及しています。iPhone、Apple Watch、AirPodsなど、様々なデバイスが対応しており、その技術標準も進化を続けています。ここでは、主要なワイヤレス充電規格である「Qi（チー）」、「MagSafe（マグセーフ）」、そして最新の「Qi2（チーツー）」、「Qi 2.2（チーツーポイントツー）」について解説します。

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 普及標準「Qi」の概要と課題

最も基本的なワイヤレス充電標準は「Qi」です。これは2008年に登場し、「エネルギーの流れ」を意味する中国語に由来します。iPhone 8以降の全てのiPhoneモデルがQiに対応しており、ケーブルなしで充電パッドに置くだけで充電が可能です。

しかし、Qiにはいくつかの課題があります。iPhoneはQi経由での充電速度が最大7.5Wに制限されており、また、充電器とデバイスの位置が正確に合致しないと充電が遅くなったり、全く充電されなかったりする不便さがありました。

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 Apple独自の進化「MagSafe」

このQiの課題を解決するため、Appleは2020年のiPhone 12から「MagSafe」を導入しました。MagSafe対応のiPhoneには充電コイルの周囲に磁石が内蔵されており、互換性のある充電器と置くことで、磁力によってデバイスが正確な位置に固定されます。これにより、充電の失敗が減り、効率も向上しました。

Apple認定のMagSafe充電器は、iPhone 16シリーズで最大25Wのワイヤレス充電に対応しますが、iPhone 12/13/14/15シリーズでは最大15Wです。非認定の「MagSafe互換」充電器は通常7.5Wに制限されるものの、価格は安価です。

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 新世代の共通規格「Qi2」の登場

ワイヤレス充電技術は、Appleが主導する形でさらに進化を遂げました。Appleが「Wireless Power Consortium（WPC）」と協力し、自社のMagSafe技術を基盤として開発されたのが「Qi2」です。

Qi2の登場は、ワイヤレス充電の高速化と普及に大きく貢献します。iPhone 15/16シリーズは発売当初からQi2をサポートし、iOS 17.2以降ではiPhone 13/14モデルでも15WでのQi2充電が可能になりました。これにより、従来の7.5Wから倍速に向上します。Qi2はMagSafeの磁気固定の利点を他のデバイスにも広げ、Apple認定外の製品でも15Wの高速充電が可能になるため、充電器の価格低下や製品選択肢の拡大が期待されています。

Macworldのテストでは、15WのQi2充電器と15WのApple認定MagSafe充電器は、対応デバイスに対する充電速度がほぼ同等であることが確認されています。

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 未来の高速充電「Qi 2.2」へ

さらに、ワイヤレス充電の未来を見据えた新規格「Qi 2.2」が2025年第3四半期から登場する予定です。Qi 2.2は、現在のQi2やMagSafe（15W）を上回る最大25Wのワイヤレス充電速度を実現します。

この新規格では、磁気による位置合わせの精度が向上し、磁界の漏れによる発熱を最小限に抑えることで充電効率が最大40%向上するとされています。また、厳格な熱管理基準（表面温度40℃以下）や強化されたコイル設計により、充電中の効率がさらに15%向上する見込みです。SamsungやGoogleといった大手メーカーもQi 2.2への参入を表明しており、ワイヤレス充電の普及と高速化がさらに加速するでしょう。iPhone 17シリーズ以降がQi 2.2に対応すると見られています。

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 まとめ：利便性と効率の向上

従来のQiと比較して、MagSafe、Qi2、Qi 2.2は、磁気による正確な位置合わせと高速充電（15W〜25W）により、はるかに優れた充電体験を提供します。消費者はより多くの高速充電器の選択肢を得られるようになり、ワイヤレス充電の利便性と効率は飛躍的に向上していくでしょう。

なお、最も速くiPhoneを充電する方法は、依然としてUSB-C接続の有線充電（iPhone 15/16はUSB-C to USB-C、旧モデルはUSB-C to Lightning）です。ワイヤレス充電は有線充電に比べてやや時間がかかりますが、ケーブルの抜き差しが不要な手軽さが最大の魅力です。バッテリーは満充電に近づくほど充電速度が低下する特性があり、これはバッテリー保護のための重要な機能です。