ニューヨーク発――調査会社ライトシェッド・パートナーズは、アップルがティム・クック最高経営責任者（CEO）の交代を検討すべきだと提言しました。同社のアナリストは、アップルには「物流中心」ではなく「製品中心」のCEOが必要だと指摘しています。

この提言の背景には、アップルの株価が今年に入り競合のマイクロソフトやメタに大きく劣後していることがあります。ブルームバーグによると、アップルの株価は、AI機能の開発競争で出遅れたことが響き、今年16%下落。これに対し、メタは25%増、マイクロソフトは19%増を記録しています。

ライトシェッドは、AI分野での出遅れが「アップルの長期的な軌道と成長能力を根本的に変える可能性がある」と警鐘を鳴らしました。AIが世界の産業を再構築する中で、アップルがその犠牲になるリスクがあると警告しています。

一方で、クック氏のリーダーシップの下で、アップルの株価は就任以来1400%以上も上昇しており、S&P500指数（430%増）を大きく上回る実績を残しています。しかし、今月COO（最高執行責任者）のジェフ・ウィリアムズ氏が退任し、サビ・カーン氏が後任となることが発表されたことで、変化を求める声も上がっています。ウィリアムズ氏はかつてクック氏の後継候補と目されていました。ライトシェッドは、ウィリアムズ氏の退任を機に「より破壊的な変革の時が来ている」と主張しています。

しかし、ブルームバーグのマーク・ガーマン記者は、クック氏がすぐに退任する可能性は低いと報じています。現在、すぐに指揮を執れる後継者が不在であることに加え、社内でもクック氏が退任の準備をしている兆候は見られないとのことです。

さらに重要な点として、アップルの取締役会がCEO交代の必要性を感じていないことが挙げられます。取締役会は、クック氏の忠実な支持者で構成されており、AI戦略の失敗、製品ラインナップの停滞、デザイン重視の企業文化の浸食といった現在の課題についてクック氏に責任があることを認めつつも、「事態を好転させられる唯一の人物」として彼を信頼し続けているとガーマン氏は指摘しています。取締役会のクック氏への信頼は「いかなる危機によっても揺るがない」とされています。

ガーマン氏は、クック氏がCEOに加え会長職を兼任し、アップルにおける影響力をさらに強める可能性も示唆しています。これは、他社のCEOが会長職も兼任した例に倣うもので、クック氏がアイフォーンメーカーに対する支配力を一層強化することになると見ています。

しかしながら、アップル社内でも変革の必要性を認識する声は上がっています。サービス部門責任者のエディ・キュー氏など一部の幹部は、迅速に適応しなければ、アップルがかつてのブラックベリーやノキアの二の舞になるリスクがあると警告しているとのことです。