旅行は楽しいものですが、その準備、特にデジタル機器関連は手間がかかります。充電器やアダプターの準備はもちろんのこと、見落とされがちなのがデータプライバシーとセキュリティです。空港ラウンジやカフェ、ホテルで利用する公共Wi-Fiは、個人情報がハッカーや詐欺師に漏洩するリスクを伴います。こうした脅威から身を守るために必要不可欠なのが「VPN」です。

 # VPNのデータ保護機能

私たちのスマートフォンやPCには、パスワードや銀行口座、クレジットカード情報など、機密性の高い個人情報が多数保存されています。公共Wi-Fiでこれらの情報を送受信する際、攻撃者は比較的容易にデータを傍受できてしまいます。これは、同じネットワークに誰もが接続でき、デバイスのIPアドレスが公開されるためです。

VPN（Virtual Private Network：仮想プライベートネットワーク）は、デバイスと外部サーバーの間に仮想的な暗号化トンネルを構築することで、たとえ信頼できないWi-Fiネットワークに接続していてもデータを安全に保ちます。VPNを使用すると、ネットワークの管理者でさえデータを傍受できなくなり、公共Wi-Fiでメールや銀行アプリを安全に利用できます。

また、多くのアプリやウェブサイトは、閲覧履歴やIPアドレスに基づく「フィンガープリンティング」と呼ばれる手法でユーザーを追跡します。VPNは実際のIPアドレスを隠すため、ウェブサイトがユーザーを追跡したり、正確な位置を特定したりすることがより困難になります。

 # VPNで広がるインターネットの利用範囲

旅行中にNetflixやAmazon Prime Videoなどのストリーミングサービスを利用しようとした際、コンテンツのラインナップが異なったり、そもそも利用できなかったりする経験はありませんか？ VPNを使えば、VPNサーバーの所在地に基づくIPアドレスでウェブを閲覧するため、まるで自宅にいるかのように、慣れ親しんだコンテンツを視聴できます。

同様に、特定の地域では、現地の規制により一部のアプリやウェブサイトへのアクセスが制限されている場合があります。VPNは、ストリーミングコンテンツへのアクセスと同様に、こうした地域的な閲覧制限を回避するためにも利用できます。VPN使用中はすべてのデータが暗号化されるため、制限されたウェブサイトにアクセスしても問題になる心配は少なくなります。

 # Appleユーザー向けの「iCloudプライベートリレー」

iPhoneやiPad、MacユーザーでiCloudを利用している方には、「iCloudプライベートリレー」という機能がお馴染みかもしれません。これはAppleのサブスクリプションサービス「iCloud+」の一部で、Safariでのウェブ閲覧時のプライバシー保護に役立ちます。

iCloudプライベートリレーはVPNと似た仕組みで、IPアドレスやDNSレコード、位置情報などの実際のデータを隠し、オンラインでの追跡を防ぎます。しかし、VPNとは異なり、iCloudプライベートリレーはAppleのウェブブラウザであるSafari内でのみ機能します。他のアプリでの動作は保護されず、ジオブロックされたコンテンツへのアクセスもできません。

とはいえ、iCloud+のサブスクリプションを利用しているのであれば、公共ネットワークでのウェブ閲覧時に追加のセキュリティ層を提供するこの機能を利用しない手はありません。設定は、[設定]（または[システム設定]）アプリから[iCloud]メニューの[プライベートリレー]をオンにするだけです。

 # 信頼できるVPNの選び方

VPNの仕組みを理解したら、次に適切なプロバイダーを選ぶことが重要です。データを保護するためには、信頼できる有料サービスを選ぶことが極めて大切です。無料のVPNの中には、パフォーマンスが低いだけでなく、ユーザーデータを第三者に販売するような危険なものも存在します。

VPNプロバイダーを選ぶ際には、Appleデバイス向けの簡単なセットアップ機能、特にApp Storeで専用アプリが提供されているかどうかも考慮すべき点です。現在、Mac、iPad、iPhoneユーザーには「NordVPN」が推奨されています。

VPNの導入は、次回の旅行先を考えるほどエキサイティングではないかもしれませんが、データを保護する時間を取ることで、大きなトラブルを回避し、どこへ行っても安心してインターネットを利用できるようになります。