スイス企業Proton、Appleを独占禁止法違反で提訴 App Storeの支配力と手数料を批判

セキュリティを重視したメールサービス「Proton Mail」で知られるスイスの企業Protonは本日、米国の独占禁止法に違反しているとしてAppleを提訴しました。Protonは、複数の韓国企業がAppleに対して起こしている既存の集団訴訟に加わる形ですが、独自の訴状を提出しています。

今回の提訴についてProtonはブログ投稿で、集団訴訟における将来の和解や判決が、AppleのApp Storeポリシーに「表面的な変更」だけでなく「実質的な変更」をもたらすことを確実にしたいと説明しています。この集団訴訟は開発者への金銭的損害賠償を求めていますが、Protonは仮に賠償金を受け取った場合、全額を寄付する意向を示しています。

 監視資本主義の助長とプライバシー企業への打撃を主張

Protonは、AppleのApp Store手数料がMetaやGoogleのような「監視資本主義ビジネスモデル」を助長していると主張しています。データを収益化しないプライバシー重視の小規模企業は害を被る一方、データを悪用する無料アプリは手数料を支払う必要がないと指摘。有料サービスを提供するアプリだけがAppleに手数料を支払わなければならない現状を批判しています。

また、ProtonはAppleのApp Storeに対する支配力が、アプリ配信において過大な権力をもたらしていると見ています。この支配力は、Appleが各国の政府によるアプリ削除要請に応じなければならない際に問題となるとも主張しました。

 エンドユーザーへの不利益と未来のインターネットへの影響

さらにProtonは、Appleのポリシーが開発者による顧客への情報提供を制限し、消費者が支払う価格を上昇させることで、エンドユーザーに不利益をもたらしていると訴えています。例えば、ProtonはAppleの制限により、アプリからFAQや顧客サポートページへのリンクを貼ることができず、消費者の利便性を損ねていると主張。手数料の存在が、顧客により低価格のサービスを提供することを阻害しているとも述べています。

Protonは、今回の訴訟を通じて「将来のインターネットがプライバシーと民主主義を引き続き保護できる」よう、上記のような社会的弊害に対処することを目指しています。モバイルアプリが現在のインターネットの主要なプラットフォームであり、民主主義の基礎をなすものであることから、「真に自由で競争力のあるモバイルエコシステムを創造するために戦うことがこれまで以上に不可欠だ」と強調しました。

Protonの訴状には、裁判所に対し、代替アプリマーケットプレイスやウェブサイトを通じたアプリ配布のサポート、代替支払い方法の利用など、App Storeの変更を求める具体的な要求が多数含まれています。