Appleの車両向け次世代CarPlayソフトウェア「CarPlay Ultra」が、自動車メーカーからの強い抵抗に直面していることが明らかになりました。複数の主要ブランドが、同システムの導入計画を撤回する動きを見せています。

英フィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、メルセデス・ベンツ、アウディ、ボルボ、ポールスター、ルノーなどが、CarPlay Ultraへの以前のコミットメントから距離を置いています。これは、2022年にAppleが発表した14社のパートナーシップリストからの大幅な撤退となります。

CarPlay Ultraは、従来のCarPlayとは異なり、車両のダッシュボード全体を統合制御し、温度、速度、燃料レベルなどの車両情報とiPhoneアプリを連動させることで、「ドライバーのすべての画面で統一された一貫した体験」を提供するとしていました。

しかし、自動車メーカー側は、ダッシュボードの制御をAppleに委ねることに対し、自社ソフトウェア体験の維持や、車載サービスからの収益確保を懸念しています。ルノーのある幹部は、「我々のシステムを侵略しようとしないでほしい」とAppleに伝えたことを明かしています。

ジャガー・ランドローバーはシステムの評価を継続中とし、フォードや日産、インフィニティは今後の導入について情報を提供していません。また、BMWは当初のパートナーリストには含まれていませんでしたが、既存のCarPlayは統合するものの、CarPlay Ultraの導入は見送ると表明しています。

この反発は、標準CarPlayが米国新車の98%に搭載されるなど、高い普及率を誇る中で起こっています。

現在、CarPlay Ultraを生産車両に提供しているのはアストンマーティンのみ。ヒョンデ、キア、ジェネシスは引き続きコミットしており、ポルシェも将来的なサポートを計画しています。

こうした撤退の動きにもかかわらず、Appleはフィナンシャル・タイムズに対し、今後もより多くの自動車メーカーがCarPlay Ultraを採用するとの見通しを示し、「自動車メーカーと密接に協力し、最高のiPhone体験と最高の自動車体験を提供するためには時間がかかる」とコメントしています。