Apple、Macの歴史的チップ移行を完遂へ：40年の変革と未来への展望

macOS TahoeがIntel Macをサポートする最後のバージョンとなることが発表され、AppleはMacの歴史における3度目となるチップアーキテクチャの移行を終えようとしています。41年の歴史の中で、Macは4つの全く異なるプロセッサアーキテクチャ上で動作し、その都度、独自の課題を克服しながら、常に私たちに馴染み深いMacとして存在し続けてきました。Appleのこのプラットフォーム移行能力は、世界でも並外れたものです。

この偉業を幾度となく成し遂げた背景には、Appleが過去の経験から多くの教訓を得てきたことがあります。最初のチップ移行は1990年代初頭、MacがMotorola 68000プロセッサからPowerPCへ転換した時でした。当時のAppleは、チップメーカーの改善の遅さに不満を抱き、異例にも競合のIBMと提携してPowerPCチップを共同開発しました。1994年3月にPower Macが登場し、旧ソフトウェアとの互換性確保のためにエミュレータが導入されましたが、この時期に開発ツールを外部企業に依存したことが、後の教訓として活かされます。

続く2005年には、PowerPCからIntelへの移行が発表されました。これは、提携していたIBMが約束したPowerPC G5プロセッサの性能目標（3GHz達成やノートPCへの適合）を実現できなかったことが背景にありました。Appleは水面下でMac OS XのIntel版開発を進め、発表後は「Rosetta」というコード変換技術を導入し、旧PowerPCアプリケーションの互換性を維持。Intelプロセッサの急速な進化と、iPodやiPhoneの成功も相まって、Macは性能面で劇的に向上し、市場での存在感を大きく高めました。

そして2020年、IntelからApple Siliconへの転換が始まりました。この移行は、過去に比べ最もスムーズだったと言われています。背景には、Appleが10年以上にわたりiPhoneやiPad向けに自社チップを設計してきた経験と、開発ツール「Xcode」を自社で完全にコントロールしていたことがあります。M1チップを搭載したMacは、発売と同時に圧倒的な性能と高い評価を獲得。「Rosetta 2」は、Intel版アプリケーションをオリジナルのIntelハードウェアよりも高速に実行できるケースがあるほどでした。

これまでのチップ移行の成功を支えたのは、過去の経験で得られた教訓と、それを引き継ぐ社内の豊富な経験でした。現在、Appleは自社でチップを設計し、ハードウェアとソフトウェアを密接に連携させることで、かつてない大きな強みを手に入れました。世界とチップ技術が変化し続ける中でも、Macはその本質を変えることなく、新たな時代へと進化を続けています。