Appleは、iPhoneの技術を応用した特注カメラシステムを開発し、来たる新作映画「F1: The Movie」のためにF1マシンからの高速度撮影に成功しました。この革新的なシステムは、F1マシンの空力、重量、安全性の厳しい制約の中で、ドライバー視点からの迫真の映像を捉えるために開発されました。

従来のハリウッド製シネマカメラはF1マシンへの搭載が不可能であり、標準的なF1放送用カメラでは映画制作に求められる高い映像品質を満たすことができませんでした。この課題に応えるため、Appleのエンジニアリングチームは、F1の技術要件と現代の映画制作ニーズの両方を満たす新たなカメラシステムの設計に着手しました。

開発されたモジュールは、F1の公式放送用カメラモジュールと全く同じスペースに収まり、重量も一致するように設計され、国際自動車連盟（FIA）の厳格なレギュレーションを遵守しています。また、衝撃、熱、振動に対する耐性も、標準的なF1放送機器の耐久性仕様を上回る形で試験・検証されています。

このカメラは、iPhone 15 Proに搭載されている48メガピクセルのイメージセンサーと、A17 ProとみられるAppleのAシリーズプロセッサを組み合わせています。ProRes Log形式での高解像度ビデオ撮影が可能で、制作チームはダイナミックレンジとカラーグレーディングを詳細に制御できます。さらに、日中のレースで遭遇する多様で高輝度な光条件に対応するため、物理的なND（ニュートラルデンシティ）フィルターもレンズシステムに統合されています。

システムはカスタム版のiOSと専用ファームウェアで動作し、この開発がiPhone 15 Proの新機能（LogエンコーディングやAcademy Color Encoding System (ACES) ワークフローへの対応など）に直接フィードバックされたとAppleは述べています。

F1のレギュレーションにより、オンボードの無線送信機やワイヤレスシステムが禁止されているため、Appleは有線制御インターフェースとしてiPadアプリも開発しました。撮影チームはUSB-C経由でiPadとモジュールを接続し、ISO、シャッター角、ホワイトバランス、フレームレート、録画開始/停止などのパラメータを調整。撮影された映像はモジュールにローカルで保存され、後で抽出されます。

Appleが手掛けた映画「F1: The Movie」は、6月25日に国際公開、6月27日には米国とIMAXで公開されます。