AppleがiPhoneの仮想アシスタント「Siri」に大規模言語モデル（LLM）を搭載し、より自然な会話と幅広い知識の提供を目指していると報じられています。このアップグレードは1～2年以内に実現するとみられますが、すでにiOS 26のベータ版には、開発者が試用できる隠れたAIチャットボットが導入されていることが明らかになりました。

このチャットボットは、現時点では専用アプリとして提供されておらず、Appleのショートカットアプリを介してアクセスする必要があります。利用可能なモデルは、Appleのオンデバイスモデル、プライベートクラウドコンピューティング、OpenAIのChatGPT（GPT-4ベース）から選択できますが、Appleのモデルは2023年10月までの情報しか保有しておらず、リアルタイムのウェブ情報には対応していません。また、違法行為、ヘイトスピーチ、暴力、自傷行為、性的コンテンツ、個人識別情報、違法薬物使用、政治的過激主義に関する議論は避けるよう設定されています。

あるユーザーが約1週間にわたりiOS 26開発者ベータ1を搭載したiPhone 16 Pro Maxでこのチャットボットを試したところ、その能力には一長一短があることが判明しました。

例えば、「strawberry（イチゴ）」という単語に含まれる「R」の数を問う単純な質問には、オンデバイスモデルは常に正確に3つと回答しました。また、基本的な算数の問題はすべて正しく解き、PEMDAS（演算順序）ルールも理解していました。料理に関する一般的な質問、例えば卵の茹で時間や特定のレシピなども、概ね正確な情報を提供しました。

しかし、その知識の範囲と信頼性には課題も多く見られました。チャットボットがサポートすると謳う多言語（アラビア語やトルコ語など）での会話は不十分で、多くの場合、無関係な単語やフレーズが含まれていました。WhatsAppとTelegramの機能比較では、形式は整っているものの、提供された情報の大部分が不正確でした。さらに、宗教に関する質問でも不正確な回答が見られ、基本的なApple OSの技術サポートや特定の国のビザ要件といった具体的な情報も誤っていました。

特筆すべきは、チャットボットが誤った情報を提供する際にも、自信に満ちたトーンを維持する傾向がある点です。このため、ユーザーがその情報の正確性を既に知っているか、別途確認しない限り、誤情報を見抜くことは困難です。

Appleがこのチャットボットを「隠された」機能として提供しているのは、現状では「幻覚」（誤った情報を生成すること）を起こしやすく、自信を持って間違いを提示する傾向があるためだと考えられています。現段階では、ChatGPTやGoogle Geminiといった既存の主要なLLMサービスに匹敵するレベルには達していません。

しかし、このチャットボットはiOS全体のライティングツールや要約機能の基盤となるモデルを使用しているとみられ、文章の言い換えや書き換えには一定の信頼性を示しています。WWDCでAppleは独立したチャットボット機能について言及していませんが、今回の発見は、将来のSiriやApple IntelligenceにおけるLLMの進化への期待を高めるものといえるでしょう。